負荷運転試験とは

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負荷運転試験とは

非常用電源装置は取り付けと点検だけでなく、負荷運転試験を行い災害時や非常時に自家発電設備が正常に稼働するかを確認する必要があります。
負荷運転試験は以下の2つの法令により定められています。

負荷運転試験を定める2つの法令

平成30年から5分程度の空ぶかしによるエンジン試運転

電気事業法

消防法第17条3の3により、非常用電源装置は定期的な点検とともに1年に1回の負荷運転試験をすることが義務付けられています。

消防法

電気事業法の定期点検も消防法の定期点検もいずれも1年に1回、負荷試験機を接続し、30分間、30%以上の負荷をかけ、無負荷運転時で堆積したカーボンを燃焼排出させます。

非常時に最低必要となる30%出力を確認し、その観測データーを添付する必要があります。

負荷運転試験の必要性

負荷運転試験を行わない、もしくは正常に作動されない場合は万が一の災害時に非常用発電装置が発動されないので、二次被害や人命にかかわるリスクが生じます。

東日本大震災時に起きた被害

日本の歴史に残る大きな震災、東日本大震災の時、停電時や津波時に非常用電源装置が日頃の点検不備や負荷試験未実施の為正常に運転されなかったケースは多くあります。そのせいで火事による燃え移りが起こったり、病院などでは医療機器が使えずに重症患者を救うのに時間がかかってしまったり、避難所で電気が使えず空気調整ができなかったり、様々な二次被害が発生しました。

不始動の原因別台数

不始動の原因
台数
割合(%)
主な例
故障・設備異常
3
18
制御系の異常 等
断水
(水系等の損傷等)
1
6
冷却水配管破損
燃料系統の
故障・異常
1
6
燃料移送ポンプ故障
他設備の異常
1
6
他設備配管の漏れ
メンテナンス不良
7
41
修理前※、始動弁膠着、バッテリー放電 等
操作ミス
1
6
不明
3
18
合計
17
100
※修理前は、修理の必要性が分かっていたが修理されていなかったものであり、台数は5台。

異常停止の原因別台数

異常停止の原因
台数
割合(%)
主な例
故障・設備異常
12
20
制御系の異常、ダクト破損、
シャフト折損 等
他設備の異常
6
10
受電設備故障、負荷設備故障、
建物損壊 等
メンテナンス不良
16
27
フィルタ目詰まり、排気弁膠着、バッテリー放電 等
操作ミス
4
7
断水
(水系等の損傷等)
9
15
冷却水配管破損、ポンプ故障 等
潤滑油系統の故障・異常
3
5
潤滑油配管破損 等
燃料系統の
故障・異常
3
5
燃料配管破損 等
その他
7
12
合計
60
100
自家発電設備が正常に起動しない理由は主に不始動異常停止の2種類です。
東日本大震災時の不始動の原因の割合はメンテナンス不良が41%を占めており、異常停止の原因もメンテナンス不良が27%と最も高い割合を占めています。この東日本大震災を機に、負荷運転試験が法令によって義務付けられるようになりました。

負荷運転試験の種類

1 ) 疑似負荷装置を使用し定格負荷で運転する方法

発電機用遮断器を投入する。常用電源側遮断器とインターロックが施されている場合は、事前にインターロックを解除し、負荷側回路を切り離す等の処置をしておく。
疑似負荷抵抗により負荷を徐々に増加し、発電機盤電力計にて発電機出力100%になったとき固定し、同時に周波数(回転速度)、電圧についてもそれぞれ定格値に合わせた時点が試験開始となる。
開始より30~60分ごとに各項目に関して、計測を行うが負荷が変動しないように、常に疑似負荷抵抗操作者とトランシーバ、仮設電話等で連絡を取り合う。
運転時間は、普通形は1時間、長時間形は3時間又は各部の温度が飽和状態になるまでとする。

2 ) 実負荷にて運転する場合

実負荷による場合は不可設備に対し停電を伴うので主任技術者、ビル管理責任者と十分打ち合わせを行い関係者に徹底した上で実施すること。
受電遮断器を「切」とし館内停電させ、自家発電設備より供給するものであり、この場合の負荷容量は発電機定格の30%以上の出力を確保することが望ましい。
実負荷試験を行ったとき、各相の電流値が不平衝共用範囲を逸脱する場合には、設置者に負荷設備の改修を申し入れる必要がある。

測定項目

・室内外温度
・発電機の出力、電圧、電流、周波数、電気子及び軸受の温度
・往復動内燃機関の潤滑油、冷却水、吸気の圧力
・往復動内燃機関の潤滑油、冷却水、排気ガス、吸気の温度
・ガスタービンの空気圧縮機の吐出圧力及び軸受の入口における潤滑油の圧力
・ガスタービンのタービン入口におけるガス温度及び軸受の出口における潤滑油の温度
・燃料ガス昇圧機、燃料ガス調圧弁(レスキュレータ)の各出口ガス圧力、温度
・原動機の回転速度

負荷運転試験の流れ

作業行程

①模擬負荷試験機搬入
②事前点検
③発電機側ケーブル接続
④模擬負荷試験機側ケーブル接続
⑤発電機始動
⑥負荷30%電流値測定
⑦計器、ランプ類、異常有無等確認
⑧負荷運転終了後 燃料確認
⑨作業完了